2015年4月1日水曜日

さよならMusic Unlimited。終了・失敗の原因7つを探る



ソニーの定額制音楽配信サービス・Music Unlimited(ミュージック・アンリミテッド)が終了しました。グローバル展開する新サービス・Playstation Music(プレイステーション・ミュージック)へ移行するのかと思いきや、日本展開は未定とのこと。バッサリ切り捨てられてしまった感がぬぐえません。わずか2年半で幕を下ろしたMusic Unlimited。“敗因”は一体何だったのでしょうか。サービス利用経験がある私なりに、7つの敗因を考えてみました。

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Music Unlilmitedとは?

Music Unlimitedは、月額980円を支払うことで2,000万曲を越す音楽がストリーミング再生できるサービスです。XPERIAやiPhoneなどのスマートフォンはもちろん、タブレットやパソコン、プレイステーションでも再生が可能。ソニー・ミュージックエンタテイメントをはじめ、ユニバーサルミュージックやワーナーミュージックなどのレーベルが参加。洋楽のラインナップはそれなりに充実していました。サービス開始当初は、1000万曲の品揃えで月額1,480円。終了時には2,000万曲までラインナップを増やし、月額は980円でした。



Music unlimitedを実際に使用してみた感想

品揃え(2,000万曲の内訳)はともかく、Music Unlimitedのシステム自体はそこそこ使いやすいものでした。ユーザーの使い勝手を考えて、それなりに頑張っているなという印象です。例えば、XPERIAで再生するために専用アプリを用意する必要はなく、ウォークマンアプリでシームレスに(分け隔てなく)再生することができます。パソコンでプレイリストを作れば、XPERIAにも反映されて聴くことができます。逆に、XPERIAで作ったプレイリストを、パソコンで聴くこともできる。これはクラウド型・音楽配信の良いところだと感じました。外出先の暇な時間にXPERIAでプレイリスト作成、帰宅後に家のパソコンで再生、といった便利な使い方ができました。ストリーミングのスピードも、再生ボタンを押してから2秒程度で再生されるので、待たされるという感覚はありません。

不満な点は、邦楽の品揃えにめっぽう弱いこと、洋楽にしても本当に聴きたい(配信サービスを利用して隙間を埋めたい)楽曲はそれほど充実していなかったということ、月額料金が高いこと。以上3点です。非常にシンプルですが、とっても重要なことでした。システム、使い勝手に大きな不満は無かっただけに、肝心のサービス内容・品質面が不十分だったことが悔やまれます。



【敗因1】クレジットカードの登録が面倒

Music Unlimitedを利用するには、クレジットカードの登録が必要です。退会申請しなければ継続的に月額料金が自動徴収される仕組みなので、クレカ払いしか選択できない(させない)のは当然と言えるでしょう。クレジットカードの登録は手間が掛かります。クレカ情報を入力することに不安を覚える人もいるでしょう。月額980円をクレジットカードで支払う、というシステムはあまりにハードルが高過ぎたのではないかと思います。このハードルを乗り越えるだけの価値があったとも思えません。


【敗因2】「2,000万曲聴き放題」は無意味なハッタリ

聴きたい曲が聴けなければ、2,000万という数字もハッタリと同じです。洋楽にはそこそこ強く、ビルボードのチャートにランクインするようなアーティストであれば、大抵の楽曲は不自由なく聴けます。しかし、邦楽のラインナップが弱すぎました。学生時代に聴いたX JAPAN、時代の象徴だったavex系アーティスト全般、いずれもMusic Unlimitedでは聴くことができませんでした。「懐かしのアーティストを聴いてみたい」、そう思って検索しても全然ヒットしないのです。私がMusic Unlimitedに期待していたのは、「CDは持っていないけど、昔懐かしのヒット曲を聴きたい」という願望をかなえてくれること。しかし、邦楽アーティストに弱いMusic unlimitedでそれを叶えることは出来ませんでした。漫画〇冊読み放題、動画〇本見放題などのサービスにも共通する事ですが、自分が見たいものが無ければ数千、数万という数字も無意味でしかありません。


【敗因3】洋楽を聴く人は、他の手段を確立している

洋楽に強いと言われるMusic Unlimitedですが、そもそも洋楽好きな人たちは「自らすすんで探して聴く」というスタイルを確立していると思うのです。YouTube、ポッドキャスト、ネットラジオ、レンタルCD。洋楽を聴く手段をすでに持っているはず。彼らが聴きたがっている音楽は、もはやパソコンやスマホにダウンロードされていたことでしょう。今さらMusic Unlimitedに頼る必要がないのです。Music Unlimitedの開始時期(2012年7月)はあまりに遅すぎたと言わざるをえません。まさに「時代遅れのサービス」であり、洋楽愛好家はYouTubeでプレイリストを作り、お気に入りのネットラジオ・ポッドキャストを見つけていたのだと思います。


【敗因4】“隙間を埋める聴き方”ができない

Music Unlimitedに頼る必要があるとすれば、「持っていないCD・楽曲を聴く」という、“隙間を埋める使い方”だと思います。音楽を全く聴かない人が、月額980円のサービスを利用しないでしょう。Music Unlimitedに加入した人たち・加入を検討していた人たちは、すでにお気に入りの楽曲をCD・ダウンロードで所有しているはず。となれば、やはりストリーミングの存在価値は「隙間を埋めてくれる使い方ができるかどうか?」にかかっていると思うのです。「持っていない楽曲の隙間を埋めてくれること」、「普段は聴かない邦楽の隙間を埋めてくれること」。それらのニーズを満たすために2,000万曲のラインナップはあまりに乏しく、月額980円はあまりに高い、というのが私の意見です。

「知らないアーティストの曲を聴いて、新たなお気に入りを見つける」といった、未知なる出会いを楽しむ使い方も考えられるでしょう。このようなニーズに対して、2,000万曲制限のあるMusic unlimitedが完璧に応えてくれる保証はありません。なんとも中途半端な品揃えに対して、毎月980円を支払う意味は感じられませんでした。


【敗因5】サービス終了の可能性があるから、プレイリストを作れない

ソニーのサービスは突然終了してしまうものが多いように感じます。Music Unlimitedにしても、長くは続かないだろうとの予測を立てていました。サービスが終わると、せっせと作ったプレイリストは全くの無駄になります。サービス終了後、ソニーの当該ページには次のようなQ&Aが掲載されています。
Q.Music Unlimitedで作成したプレイリスト、マイライブラリーはどうなりますか?
A:サービス終了日以降ご利用いただけなくなります。

これが怖かったのです。サービス終了とともに、プレイリストが無駄になる。このリスクを察知していたユーザーはプレイリストを作りたがらないでしょう。徒労に終わることがわかっているからです。私もウォークマン(音楽プレーヤー)ではプレイリストを細かく作成していますが、Music unlimitedにおいてはプレイリストを作る気になれませんでした。案の定サービスは終了し、プレイリストはまったくの無駄になってしまいました。丁寧に作り込んでいた人たちがかわいそうだと感じます。


【敗因6】ダウンロードの利点、所有する満足と安心には勝てない

ダウンロードタイプの音楽ファイルが登場した時、「CDのほうが良い。モノが無ければ安心できない」という声は多く聞かれました。しかしその後にパッケージ製品は廃れ、ダウンロード製品が主流になりました。「所有している」という事実に変わりがないからこそ、パッケージ⇒ダウンロードへの変更は受け入れられたのでしょう。

ダウンロードからストリーミングへの形態変化は起こり得るか?少なくとも現状の曲数、料金では不可能だと思います。月額980円を取るのであれば、この世の音楽のすべてを。2,000万曲(新サービス・Playstation Musicの場合は3,000万曲)という制限があるのなら、月額480円でやっとスタートラインに立てるのではないかと考えます。

CDやダウンロード製品には、「所有している」ことで得られるメリットが存在します。ストリーミングサービスがいくら利便性を主張したところで、CD・ダウンロードの絶対的なメリットを埋めることはできないと思うのです。今回のようにMusic Unlimitedが2年半でサービスを終了した事実を見ればなおさらです。細分化して作り込んだプレイリストは水の泡となり、ユーザーは新たなサービスを探すか、手元のCD・ダウンロードでプレイリストを再構築する作業をしなくてはなりません。実際にMusic Unlimitedを使ってみて、ストリーミングサービスが根付くであろう可能性は微塵も感じられませんでした。曲数が増え、使い勝手が良くなり、月額料金が値下がりしたとしても、です。



【敗因7】やっぱり高い、月額980円

Music Unlimitedの弱点は、邦楽にめっぽう弱いこと、洋楽のラインナップも決して盤石ではないこと、“たった”2,000万曲、サービスが終了すればプレイリストは無駄になること。このようなサービスに対して、980円という月額料金は明らかに高いと思いました。開始当初は月額1,480円です。500円値下がりしていますが、価格設定を見誤った(受け入れられなかった)、価格を変更した、その時点でMusic Unlimitedのサービスに限界があったことを自ら認めたようなものではないかと感じます。

月額980円というのは、1か月だけ加入して「やっぱり要らない。退会しよう」と決断するにはピッタリの金額です。これが月額480円であれば、「解約も面倒だし、もう1か月試してみよう」となりそうです。手元にファイルが無いこと、ストリーミング再生であること、聴ける曲数に限りがあること。以上3つのデメリットを考えれば、月額300円台が良いとこだろうと思ってしまいました。月額480円で集客できない、ビジネスが成り立たないのであれば、そもそも望まれていない(お金を払う価値のない)サービスなのかもしれません。


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定額制音楽配信を日本で成功させることは、現状不可能だと思う

Music Unlimitedのように月額980円を取るのであれば、この世にある楽曲の99%を揃えて、1%の不満も感じさせることのないラインナップで勝負しなければサービスは成り立たないと思っています。そんなことは現状まず不可能でしょう。つまり、「Music Unlimitedのサービスは最初から無理があった」というのが私の考えです。参加するレーベル・レコード会社との交渉、JASRACの巨大な壁が立ちはだかる限り、低料金で音楽聴き放題(不満のないラインナップ)は不可能でしょう。これらの問題解決が難しいという事情は容易く想像できます。しかし、効果的なプロモーションによってユーザー数を増やし、月額料金を980円から値下げすることは出来たのではないか、とも考えます。ラインナップの問題を解消することが不可能であるならば、判断次第で変更できる価格で努力してほしかった。そのためにユーザー獲得に注力してほしかったと思うのです。サービス継続に必要なユーザー数を獲得できなかった理由は、Music Unlimitedが魅力に乏しいサービスだったことに尽きるのではないでしょうか。終わるべくして終わったサービスだと感じています。



日本での成功に邦楽は不可欠。世界での成功に邦楽は必要ない

ソニーが世界展開する「プレイステーション・ミュージック」の対象国に、日本は含まれていません。ソニーとタッグを組んだSpotify(スポティファイ)の定額制音楽配信は、世界で一定の成功を収めています。では、なぜ日本で音楽配信サービスが定着しないのか。その答えは、ここ日本において邦楽の聴けないサービスなど無価値だから、だと思います。無価値は言い過ぎだとしても、価値が無いに等しいと思っています。洋楽だけを聴く人の数よりも、邦楽も洋楽も聴きたい人の数のほうが圧倒的に多いでしょう。

Spotifyが各国で受け入れられている理由とは何か。「邦楽をラインナップする必要がないから」だと思います。総人口201万のラトビアの人たちがラトビア人アーティストの楽曲をじゅうぶんに聴けなかったとしても、Spotifyの膨大な楽曲数はそれだけで魅力的に映るはずです。リトアニア(325万人)、エストニア(134万人)など、Spotifyサービス対象国のほとんどがそうと言えるでしょう。

しかし日本では事情が違います。邦楽はあらゆるジャンルで多様性を発揮し、独自の進化をたどっています。1億2691万人もいれば、音楽を作る人、聴く人の数、それらが生みだす音楽のジャンルも膨大です。そうなると、邦楽が聴けないことは大きな問題となってしまいます。大いに不満を感じるでしょう。「邦楽をラインナップする必要がない(自国の音楽を用意する重要性がない)」ことは、音楽配信サービスを展開する上で非常に優位なポイントだと思います。



日本で成功させるなら、X JAPANもavexも必要

いくらオシャレで先進的に見えるサービスであっても、X JAPANが聴けないのであれば無意味。90年代のavexで懐かしい気持ちになれないのなら無意味。私はそう思ってしまいました。この手のサービスを利用する人たちの活用シーンも、おそらくは「そこまで大好きってほどではないし、CDも持っていないけど、2,000万曲もあるのなら聴きかじりたい」といったものではないでしょうか。それに当てはまる楽曲のほとんどは、洋楽ではなく邦楽だと思います。

私はツタヤのCDネットレンタルサービスを3年ほど利用していました。月額3,900円を3年間、トータルの支払いは14万円です。安くはない(いや高い)出費でしたが、聴きたい楽曲は邦楽・洋楽問わずほとんどラインナップされていて、利用料に対するサービスの価値をしっかりと感じることができました。郵便受けに届くから受け取りの面倒がないことや、届いた封筒を使い回してポスト投函で気軽に返却できることなど、かゆいところに手が届くサービスでもありました。だからこそ3年近くも継続利用していたのだと思います。聴きたいものがしっかり聴ける。あまりに基本的なポイントを抑えることが出来なければ、定額制音楽配信サービスの日本での成功はありえないだろうと感じています。日本人が聴きたいのは、やっぱり邦楽です。たとえ洋楽好きな人間であっても、月額980円という高いお金を支払って、ほんのわずかな邦楽しか聴けないのであればガッカリ感は拭えません。X JAPANの検索結果が0件だったとき、Music Unlimitedが浸透しない理由をはっきり確信できた気がします。


ストリーミングには期待しない。けれどソニーには頑張ってほしい

もしもPlaystation Musicが日本で展開されるとして、あいかわらず邦楽の品揃えが不十分であるのなら、Music Unlimitedと変わらぬ道を歩むのではと思っています。今回、Music Unlimitedの敗因を探ってみても、ソニーが駄目で失敗したというより、日本における音楽環境の特殊性がストリーミングサービスの障壁になっていると感じました。J-POPやアニメ音楽、ボーカロイドに代表される音楽ジャンルの多様性、独自性、細分化された音楽ファン。これらを無視して洋楽の豊富なラインナップを主張したところで、日本でストリーミングサービスが根付くとは思えないのです。邦楽を聴かない洋楽ファンはごく少数で、多くの方が「邦楽との掛け持ち」でしょう。日本のレーベル・レコード会社、JASRAC等が絡む複雑な問題を解消できない限りは、どこがやっても同じ。Music Unlimitedの敗因は、単に「ソニーの失敗」で片づけることはできないと感じました。私が挙げた7つの要素だけが、サービス終了の原因ではないでしょう。Music Unlimitedの敗因は、加入したユーザー、加入しなかった人たちが、いちばんよく知るところだと思います。プレイステーション・ミュージックの日本展開は未定とのことですが、音楽・動画に力を入れるソニーのエンターテインメント分野には今後も期待し続けたいと思います。さよなら、Music Unlimited。2012年7月のサービス開始から約2年半、おつかれさまでした。

■厳しく評価させていただきました
定額制音楽配信を100点満点で評価。LINE MUSIC、AWA、ソニー


■邦楽のラインナップを充実させてほしい、という訴えです
定額制音楽配信は根付くか?LINEやApple Musicに期待する事


Playstation Music 概要

Playstation Music(プレイステーション・ミュージック)は、ソニーの定額制音楽配信サービス。ソニー・ネットワークエンタテインメントインターナショナル(SNEI)とスポティファイ(Spotify)が提携し、3000万以上の楽曲、15億以上のプレイリストを提供。PS3とPS4で利用でき、音楽をBGMで流しながらゲームをプレイすることもできる。今後はXPERIA(スマホ、タブレット)での利用も可能に。世界41カ国・地域でサービス開始(2015年3月30日)。日本国内でのサービス展開は未定。

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